銀を与えて秀子の行く先を問い詰める外は無い、余は巾着から五六個を攫み出して彼に与え「シテ其の美人は何処へ行った」小僧「人に見られては成らぬと思ったか大道へは出ずに茲から直ぐに裏路へ這入りました」余「裏路へ入ってそれから」小僧「夫からハイ塔の方へ行きました」余「幽霊塔の方へか」小僧「ハイ」余「爾して其の後は知らぬのか」小僧「イイエ、若し大道へ出たならば私は気にも留めぬ所でしたが裏路へ曲がった丈に何所へ行くのだろうと見届ける気に成りました、コレは此の家の婆さんが常に私に言い附けるのです、隠れも何もせぬ人は見届けるに及ばぬけれど、隠れようとする人は必ず見届ける様にせよ、金儲けの種になるからと、イイエ本統ですよ、夫だから私は見え隠れに其の後を尾けて行きました、所が幽霊塔の裏庭へ這入り、堀端に在る輪田夏子の墓の前へ蹐《しゃが》み、二十分ほど泣いて居ました、爾して堀に向かった方の窓を開き其の中へ這入って了いました、何でも玄関からでは人に見られるから、誰にも知らさぬ様に、故々窓から這入ったのですよ」
愈々怪しむ可き次第である、自分の家へ帰るのに裏の窓から忍ぶ様にして這入るとは決して唯事ではない、而
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