れたと知れた時は、私は世界の果てへでも逃げて行き度い程に思い、高輪田に其の心を伝えましたけれど、彼は猶慰めて、まだ様々の工夫が有るのだから、気長く仕揚げまで見て居ろと云い、爾して一方では私へ婚礼を迫りました、初めの中なら無論断りましたけれど、斯うまで彼と共に悪事へ深入りをしては最う断る事は出来ません、殊に彼は二言目には私を嚇かし、妻にならずば此の家へ隠れて居る事を世間へ知らせるの、又は自分へ縋って居ねば再び世間へ顔を出す時は来ぬのと様々の事を云いますから、到頭彼の言葉に従い彼と婚礼する事になりました」
 余「エ、此の様に隠れて居て、能く婚礼が出来ましたネ」お浦「ハイ夫は高輪田が巧みに計らいました、彼は私の姿を変えさせ、引き連れて夜汽車に乗り、此の隣りの州へ行き、矢張り之も賄賂の力で貧しい寺の和尚を説き、婚礼の式を挙げさせ、爾して翌々日の晩に此の土地へ帰って来ました」余「其の様に式まで行うた夫婦なら生涯彼の愛を頼みとする外は有りますまい」
 お浦は益々恨めしげに「エ、エ、彼の愛、彼に愛の心などが有りますものか、彼の目的は唯私を元の通り丸部の養女にして爾して叔父の財産を手に入れるのみに在る
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