人殺しをさえ目ろむ女が、何事に躊躇する者か、お浦「私も余り恐ろしい事と思い、少しは争いましたけれど、是をせねば秀子に恨みを返す事が出来ぬと云われ、ツイ其の言葉に従う気になり、自分の指環や着物|抔《など》を与えました、高輪田は其の指環や着物を以て死骸を私と見擬《みまが》う様にし、彼の印度の織物に包んで堀の中へ投じました」余「此の様な悪事に賛成するほど秀子が憎いとは貴女も能く能くの因果です、秀子の命を奪わねば到底満足が出来ぬと見えますネ」お浦「でも秀子は当然此の世に住む権利のない人間では有りませんか、之を殺すのは唯の人を殺すとは違い天罰を補うのだと高輪田が云いました、私も成るほどと思いましたけれど今では後悔します、ハイ後悔に堪えねばこそ此の通り何も彼も打ち明けて貴方へ申すのです」
是だけは嘘らしくない、余ほどの後悔に責めらるるに非ずば仲々斯うまで打ち明ける事はせぬ、余「後悔が遅過ぎましたネ」お浦「本統に遅過ぎました、其の後と云う者は犇々《ひしひし》天罰が自分の身へ落ちて来るのかと思われました、アノ死骸が頓て堀から引き出され、貴方の証言で浦原お浦の死骸ではないと分って、全く高輪田の計略が外
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