を貴方にでも秀子にでも見られては何事も面白く行かぬと思い私は長三に其の旨を説き、ヤッと彼を追っ払いました、彼が立ち去ると引き違えて貴方が一方の戸の所から這入って来ました。
「其の後の事は申さずとも御存じの通りです。夫から私は貴方の言葉に失望して、庭の方へ立ち去ると松谷秀子に逢いましたから、寧ろ此の女を貴方の前へ連れて行って、無理にでも左の手袋を取らせるが近道かと思い、話が有るからと云って誘い、引き連れて再び書斎へ行って見ますと最う貴方は居ないのです、居ないのではなく、後で分りましたが大怪我をして声も立たぬほどの有様となって本箱の蔭に倒れ、私と秀子との問答を聞いておいでなさったのです。
「最う序でですから何も彼も申して置きますが貴方の怪我も長三の仕業です、彼は私に追い払われて一旦窓から立ち去りましたけれど、立ち去ったと見せて又引き返し、アノ室の仕組は誰よりも能く知って居る者ですから、壁の間に秘密の道が有ると知り其所へ潜り込んで爾して様子を窺って居た相です、窺って居ると私が貴方に向かいアノ通りの事を云いましたから、彼は貴方が世に有る間は到底《とて》も私を自分の妻にする事は出来ぬと思いました
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