小僧は確かに先頃余に贋電報の発信人を密告した、彼の千艸屋と云う草花売りの婆の雇人で、手に持って居る品が、此の辺の人の持たぬ貴夫人持ちの提皮包《さげかばん》である、秀子が昨夜此の様な皮包を提げて居たか否やは覚えぬけれど、若しや秀子が草花屋へ立ち寄って此の小僧に何か買物を托したでは有るまいかと思い、馬を猶も其の方に近づけると、小僧は足音に驚いて振り向いた、振り向く途端に馬は驚き、常よりも張り切って居る為に、忽ち逸して、余が手綱を引きしめる暇もないうち横道へ走り出した、後で思うと何か人間以上の力が此の馬を導いたかとも怪しまれる程である、馬は走り走った揚句、遂に其の草花屋へ駆け込んで其の庭で踏み留まった、是だけでは別に怪しむにも足らぬけれど、此の時此の家の奥の室とも云う可き所に方《あた》る一つの窓の戸帳《とばり》を内から颯《さっ》と開いた者が有る、何でも遽しい余の馬の足音に驚き何事かと外を窺いた者らしい、併し其の者、余のpを見て又遽しく其の戸帳を閉め、内に姿を隠したが、余は自分にも信じられぬほど目早く、チラリと其の顔を見た、見て殆ど馬から落ちんとする程に驚き、思わず「ヤ、ヤ」と声を発した、此の
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