い機嫌を取る様な素振りを見せては了ませんよ、秀子の貴方に愛想を盡す事が一日遅ければ、其の汚名も一日長く成るとお思いなさい、長くなる中に時機を失えば取り返しが附きませんから」余は涙を呑んで「宜しい、分りました、けれど秀子を救うのは直ぐに着手して下さらねば」権田「無論です、私の未来の妻ですもの、貴方から催促が無くとも早速に着手します、救うて遣って親切に感じさせる外に私の手段は有りませんから」
 余は何とやら不安心の想いに堪えぬ、「けれど権田さん秀子を救う事は万に一つも遣り損じは有りますまいね」権田「其の問いはくど過ぎます、兎角に貴方は未練が失せぬと見えますが能く物の道理をお考え成さい、貴方と秀子との近づきは、云わば昨今の事ですよ、私は八年前から彼の女に実意を盡くし、唯弁護に骨折った許りでなく、牢を脱け出させた事から其の後今まで何れほど苦労して居るか分りません、此の苦労に免じても秀子は当然私の妻たる可き者、夫を思えば決して未練を残す可き道はないのです」余「イヤ一旦思い切った上は未練を残しはしませんが唯果たして助かるや否やが気掛かりです、貴方が確かな証拠と云うは、全体何の様な証拠ですか、一応夫
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