ゃ》も真似する事が出来ず画工も彫刻師も写す事の出来ぬ宏壮な優妙な所の備わって来ると云ってある、此の秀子の事が正しく其の宏壮な優妙な所の備わった者ではあるまいか、人を殺し牢を破る様な女が、私慾を離れて良心の満足を求めるなどとは余り不似合に思われもするけれど、何う見ても宏壮で爾して優妙である、悪心などは一点も現れて居ぬ。
若し、一点だも此の顔に悪意悪心の認む可き所が有ったら、余は何れほど安心したかも知れぬが、唯一点も其の様の所のない為に全身を切り刻まれる様な想いがした、何うして此の女を思い切ることが出来よう、此の女の外には世に「清い」と云う可き者はない、罪あっても罪に染《そ》む顔でない、汚れても汚れはせぬ、之に悪人悪女の様に思うては罰が当るとは、殆ど空|畏《おそろ》しい程に思い、腹の底から「オオ秀子さん許して下さい、私は今と云う今、自分の不実、自分の愚かさを思い知りました」と我知らず打ち叫んで、再び権田を跳ね退けて、秀子の身に縋り附こうとすると、権田は猶も強情に遮って「丸部さん、今更何と後悔しても及びません、其の証拠には、コレ之を御覧なさい」と云いつつ、秀子の左手を取って、其の長い手袋を
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