て邪魔物が来たと云う様な当惑の様子も見えたが給仕は更に構いなく「ハイお紺婆を殺した養女お夏というは牢の中で死にましたが、同じ年頃の古山お酉と云う中働きが矢張り時計の捲き方を知って居た相です」お浦は耳寄りの事を聞き得たりと云う様子に熱心になり「その古山お酉とは美しい女で有ったの」給仕「ハイ之は最う非常な美人で、イヤ私が此の家へ雇われぬ先の事ゆえ自分で見た訳ではありませんが人の話に拠ると背もすらりとして宛《まる》で令嬢の様で有ったので、村の若衆からも大騒ぎをせられ、其の中に一人情人が出来たそうです、爾してお紺の殺される一ケ月ほど前に色男と共に駈落し、行方知れずに成って居たが、お紺の殺された後故郷|※州[#「※」は「あなかんむり+乙」、28−上21]《ウェールス》に居る事が分り其の色男と共に裁判所に引き出されてお調べを受けましたが、遠い※州[#「※」は「あなかんむり+乙」、28−上22]に居て此の土地の人殺しは関係の出来る筈もなく、唯証人として調べられたのみで直ちに放免せられました、何でも其の後色男と共に外国へ移ったと云う事です。今頃は米国か濠洲《おうすとらりや》にでも居るのでしょう」お浦「
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