「初めは美人と云う話で有ったのに、美少年であるのかと私は聊か怪しみましたが、能く見ると、顔の美しさ丈でも明白です、男に化けた女です、牢の中に居た為に頭の毛を短く刈られ、あんまり見っともない者だから、男にしたのかと私は斯う思いましたが、実はそれより猶深い理由が有ったのです、其の時権田は私へ向い、「是なる少年が、兼ねてお願い申して置いた松谷秀子嬢です」といいました。私は何気無く聞き取りましたが愈々手術に取り掛かる約定を極める時と為って権田に向い、「腹蔵なく依頼者の身の上を聞いた上でなくては」と主張し「第一権田さん、依頼者の松谷秀子という姓名では了ません。輪田夏子と云う本名でなくては」と皮肉に急所を突いて遣りました、是には権田も驚きましたよ。
「到底私を欺く事は出来ぬと見て権田は打ち明けました、実は輪田夏子では有るけれど何うか此の秘密を守って呉れといいますから、勿論だと答え、夫から権田は立ち去って夏子だけが私の許へ残りました、其の後で夏子から詳しく事情を聞きましたが、兼ねて夏子は脱獄の考えが有って、権田時介に其の旨を打ち明け、時介から充分其の目的の達する様にして遣るとの約束を得て居ましたけ
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