もする。
先生「是程手広く人を救うて能くも此の職業の秘密が世間へ洩れずに居る事を怪しむでしょうが、夫は最う充分に大事を取って有るのです。私が先ず腹蔵なく依頼者の秘密を聞いた上でなければ需《もとめ》に応ぜぬは是が為です、依頼者は既に私は自分の悪事を聞き取られた上に前身の顔形と後身の顔形とを取られて居ますゆえ、全で私に咽喉首を握られて居る様な者で決して私の事を口外し得ないのです、口外すれば自分の生命がないのです、夫だから私の職業の秘密は其の人の生命と同じほど大切に守られて来たのです、イヤ是は話が横道へ反《そ》れました、是から権田時介の来て後の次第を申しましょう」
第八十二回 美少年
先生の言葉は次の如く引き続いた、「扨私が何の様にでも女の顔を作り直して遣ると答えた者ですから、権田時介は大いに喜び、それでは近々連れて来るから宜しく頼むとて立ち去りました、是より二週間も経て後ですが、英国の新聞に、殺人女輪田夏子が牢死したという事が出ました、私は之を見て、自然に権田時介の事を思い出し、様々に考えて様々の想像を附けましたが、それから二週間ほどすると、権田時介が一人の少年を連れて参りました。
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