「ソレ此の鍵の札と此の箱の記号とが同じことでしょう、貴方には是が分りませんか」と叱りつつ箱を開いた、兎に角之ほど用心に用心して納《しま》って居る箱だから中には一方ならぬ秘密を隠して有るに違いない、鬼が出るか蛇が出るか余は恐々に其の中を窺いて見た。
 第一に目に留まるは白い布だ、白い布で中の品物を包んで有るのだ、先生は箱の中に手を入れて其の布を取り除き、布の下の品物を引き起した、何でも箱の中に柱が有って、蓋する時には其の柱を寝かせ、蓋を取れば引き起す事の出来る様に成って居るのだ。
 引き起された其の品は何であろう、女の顔である、余は一時、生首だろうかと怪しんだが生首では無い、蝋細工の仮面である、死んだ人の顔を仮面に写して保存して置く事は昔から世に在る習いで其の仮面を「死人の顔形」と称する由であるが、此の蝋細工は即ちそれである、誰の顔形だか兎に角も顔形である、余は一目見て確かに見覚えの有る顔と思ったが、見直すとそうでない、円く頬なども豊かで先ず可なりの美人では有るが、病後とでも云う様で気の引き立たぬ所が有る、寧ろ窶《やつ》れたとも云う可きである。
 先生は更に箱の中から、少し許りの髪の毛を
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