身体の神髄から、ゾッと寒気を催して、身震いを制し得ぬ、先生も何だか神経の穏かならぬ様な声で「茲に秀子の前身と後身が有るのです」と云い、今度は自分で彼の仏壇の様な戸を開き掛けた、余は物に臆した事のない男だけれど、自分で合点の行かぬほど気が怯《ひるん》だ、何でも今が、恐ろしい秘密の露《あらわ》れ来る間際に違いない、人生に於ける暗と明との界であろう、先生の此の次の言葉が恐ろしい、恐ろしいけれど又待ち遠い、胸の底から全身が固くなって殆ど息を継ぐ事も出来ぬ。

第七十五回 死人の顔形

 仏壇の様な戸の中も、略ぼ左の棚と同じ工合で、白木の箱が二個乗って居る。
 何の箱であるか更に合点が行かぬ、けれど唯気味が悪い、先生は暫く双方の棚を見比べて居たが頓て決定した様子で「矢張り前身を先にお見せ申しましょう、爾すれば私の手腕が分り、成るほど新しい生命を与える人だと合点が行きます」
 斯う云って左の棚から其の箱を取り卸した。「サア此の箱を開けて御覧なさい」余は開ける丈の勇気が出ぬ、「ハイ」と云ったまま躊躇して居ると先生はじれった相に「では私が開けて上げましょう」とて余の手に在る鍵の束から一個の鍵を選り出し
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