子に向い「全く安心してお出でなさい」と念を推した上、更に叔父の病室へ遣って行った。
 余が戸口まで行くと恰も中から看護人の服を着けた男が出て来た。看護に疲れて交代する所らしい、余は此の人の顔に確かに見覚えがある、けれど其の誰と云う事は今は云うまい、先ず急《せわ》しく其の男を引き留めて「イヤ一寸伺いますが、今此の病室へ入って好いでしょうか」看護人「可けません、ヤットお眠りに成った所ですから」余「では目の覚めた頃にしましょうか。併し今貴方に少し伺い度い事が有ります」看護人は怪しげに余の顔を見たけれど「貴方は誰方です」余「ハイ病人の甥丸部道九郎です」看護人「では何なりとお返事致しましょう」余は此の者を連れて、密話に最も都合の好い一室に入り、先ず一椅子を指して「サア立って居ては話も出来ません、之へお掛けなさい、エ、森主水《もりもんど》さん」と名を指した。

第六十六回 何を証拠

 姿は異って居るけれど確かに此の看護人は先にお浦の事件にも関係した探偵森主水である。余は彼の目の底に一種の慧敏《けいびん》な光が有るので看て取った。
 彼は名を指されて痛く驚いたが強いて空とぼけもせぬ。忽ち笑って「イ
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