捧げさせようと云うのですから一通りや二通り秀子の身の運命を握って居るのではなく、全く秀子を、自分の思う儘にする事が出来るのです。秀子を助けると助けぬとは、其の人に縋るか其の人を度外に置くかの区別です、嘘と思って其の人にあって御覧なさい、縦しや秀子が死んだとても其の人なら新しい命を与えて秀子を生き返らせる事が出来ると云っても好い程です」
 余は問い返さぬ訳に行かぬ。
「其の人は誰ですか」穴川「サア其処が私の秘密ですよ、只は聞かせる事が出来ません、貴方から堅い約束を得た上でなくては」余「何の様な約束です」穴川「私を其の筋へ訴えたり、又は外国へまで遣ったりする前に、屹度其の人の所へ行くという約束です」余「其の様な約束が何になります」穴川「私に取っては重大な事柄です」余「何んで」穴川「貴方が其の人の所へ行って頼みさえすれば成るほど是では穴川を窘《いじめ》るにも訴えるにも及ばぬと云う合点が行って、私の有無を構わぬ事に成りますから」余「若し其の人の所へ行って、貴方の言葉が嘘だと分ったなら」穴川「其の時には私を訴えようと、何うなさろうと御随意です、勿論此の通りの身体ですから貴方が其の人の所へ行って来
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