敵な奴、余が此の室に居るのも構わず、イヤ夫とも余の眠って居たのを知って居たか知らん、爾だ知って居た、知って居た、爾なくば到底も這入って来はせぬ、併し待てよ余の眠ったを知って居たとすれば、何処かからひそかに余の挙動を窺いて居ると見える、ハテ其の様な窺く所があるか知らん。オオ、分ったぞ、分ったぞ、アノ絵姿の眼がそれだ、目の所が抉抜《くりぬ》いて有って、丁度外から其の目へ目を当てて中を窺くのだ、余り面白くもない工風を仕た者だ、宜し、斯うと分れば余にも亦余だけの工風がある。
 余は胸の中に工風をたたみ、先ず此の住者の足の鎖を解いて遣ろうと、衣嚢から例の小刀を取り出して、其の中の錐や旋抜きなどを、鎖に附けて有る錠前に当て、智恵の限りを盡して見たが凡そ三十分の余に及んで到頭錠前を外して了った。
 白痴ながら住者は甚《ひど》く喜んで室の一方の隅へ行き、何か拾って握って来て、お礼と云う見得で余に差し出した。其の手を開かして見ると、有難い、昨夜余が翻《こぼ》した燐燧を拾い集めた者で其の数が七本ある。余は涙の出るほど有難い、早速受け取って、一本の葉巻|莨《たばこ》を燻らせたが、是でも蘇生の想いがある、ナニ
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