見事でもない。多分は名もない絵工が内職に描いたのであろう。併し大きさは絵絹が勿体ないほど大きい、姿は女の立った所である、何も別に取り所とてはないが、唯其の眼が、真成に生きた様な光を発し、余を瞰《み》下して居る様に見える、顔にも容《かたち》にも生気はないが眼だけには実に異様な不似合な生気が有る、画の眼とは思われぬ。
 余が今の境遇は、知りもせぬ女の画姿などに気を留めて居るべきでない、夫だのに何となく其の眼だけが気に掛かる、扨は余が未だ寝呆けて居るのか知らんと自分ながら怪しんで自分の目を擦って見た。爾して再び頭を上げて見直したが、是は何うだ、画姿の眼の生気は全く失せて居る、何の意味も何の光もなく、矢張り画相応に無趣味無筆力の眼である、余は何うしても合点が行かぬ、或いは寝呆けて見誤ったのかも知れぬが、併し此の画像の眼に何等かの曰くがあるに違いない、決して自分の見損いとのみは思えぬ。
 けれど其の詮索は、今は仕て居られぬ、第一に見たいのは昨夜の、次の室の住者である、彼は何者か何の様な姿形か、斯う思って次の室へ行って見たが、室の向うの片隅に小さくなって背屈《しゃが》んで居る、夜前思うた通り脊僂《
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