の身の秘密も自然に分るに違いない、斯う思って、腹の中で「ナニ蜘蛛などが恐ろしい者か」と繰り返してお題目の様に唱え、馬車の所へ復《かえ》って来て、穴川甚蔵に、寝間は何所に在るかと聞いた、早く彼を家の中へ寝かして遣らねば成らぬから。
「寝間は二階の二室目です」と彼は答えたが、此の怪我人を二階まで運び上げる訳には行かぬ。下の何所かへ寝台だけ降して来て寝かさねばならぬ、更に其の由《よし》を甚蔵に告げて置いて又も家に入り、其所此所を見廻すと、曩《さき》に犬の居た室を隔て其の次に階段がある、狭い裏階子の様な者だ。此の辺にも若し蜘蛛が居はせぬかと見廻しながら階段を上ったが見廻して居て仕合せだったよ、若し見廻さずに昇ろう者なら飛んでもない目に逢う所であった。
第五十回 閉じ込んで置く者
見廻しつゝ登ると階段の中程の横手の壁に潜戸《くぐりど》の様な所がある、何か秘密の一室へでも通ずる隠し道ではあるまいか、戸の色と壁の色と一様に燻《くすぶ》って閉じてあれば、容易には見分けも附くまいが、開いて居る為余の目には留まった。
余が其の前を過ぎようとすると、中から誰か黒い石片《いしきれ》の様な者を投げ附けた
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