お浦とを連れてシセックと云う土地へ避暑に行った事がある、其の時お浦は余と共に土地の谷川へ這入って居て(勿論跣足で)足の裏へ甚い怪我をした事がある。其の頃は其の谷川の上手の山から石を切り出して居たので、切石の屑片《かけら》が川の底に転って居てお浦は運悪く其の角を踏んで辷ったのだ、何でも足の裏を一寸ほども切った、其の傷が生長してまで残って居たのみか、足が育つと共に創の痕も育ち、殆ど二寸程の痕になって居るとは、今より余り遠くもない以前に余とお浦と幼い頃の昔話をして居てお浦が余に話した所である、然るに此の死骸の足の裏には毛ほどの創の痕もないのだ。
是よりも猶確かな証拠は、お浦が十六七の時で有った、余は自分の懇意な水夫に繍身《ほりもの》の術を習い自分の腕へ錨の図を繍って入墨した、お浦は羨ましがり自分の腕へも繍って呉れと云うから、余は其の望みに従い、お浦の手の腋に隠れる辺へ草花を繍って遣った、尤も之は唯外囲いの線を繍った丈で、後で痛くて耐えられぬと云うから彩色せずに止したけれど其の線へは墨だけ入れて置いた、最も去年の夏と思う、お浦が夕衣《いぶにんぐどれす》を着けて居るとき余は其の草花の外囲いが歴
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