らぬ場合に迫って居た、お浦に何事かの秘密を看破せられ、殺す外には口留めの工夫がなく、殺すと云って恐迫《おどし》て居た、真に殺し兼ねざる決心の様も現われて居た、爾してお浦と攫み合いの喧嘩を始め、お浦を床の上へ投げ倒した、其の後は何うしたか知らぬけれど其の時限りお浦の姿が見えなくなって今日初めて堀底から現われたのだ。
是だけで考えて見ると何うも秀子の仕業と見認《みと》めぬ訳に行かぬ、けれど少し合点の行き難いは、何うして何時の間にお浦を殺し何時の間にアノ室で其の死骸を隠し、何時の間に死骸の首を刎《はね》て爾して何時の間に堀の底へ沈めただろう、勿論余は秀子の一挙一動を監視して居る訳ではなく其の後一週間も寝て居たのだから其の間に秀子が何の様なことをしたかも知れぬ、或いはお浦を投げ倒したとき、実は床板をでも外して有って、余の耳に投げ倒した様に聞こえたのは其の実床の下へ投げ込んで置いたので夜に入って床下から引き出し卓子掛けに包んで堀へ持って行ったのかも知れぬ。
けれど余は秀子が其の様な事をする女とは思わぬ、イヤ少くとも此の時は未だ思わなんだ、アノ美しい顔で、若しも此の様な事をするとせば、人間第一
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