み顔に「アア水死した者ではない、少しも水は呑んで居ぬ、死骸に成った上で堀に投げ込まれたのだ」と云った、次には腰の辺へ大きな石を縛り附けてあるのが現われた、死骸の浮き上らぬ用心たる事は無論である、叔父は殆ど見兼ねたけれど必死の勇を鼓して辛くに見てるらしい、次には左右の手の所まで解いたが、探偵ばかりは全く落ち着きくさって居て、静かに死骸の其の両の手を悉く熟視した、手には左右とも二個ずつの指環がはまってある、探偵「此の指環に見覚えは有りませんか」と叔父に問うた、勿論見覚えがある。余は幾年来、お浦の両手に都合四個の此の指環が輝いて居るのも見飽きた一人だ、叔父は前にも記した通り検事を勤めた昔と違い、非常に神経が弱く成って、充分に返事は為し得ず、単に「私が買って遣ったのです」と答えた、お浦の名さえも口に得出さぬ、探偵「誰に買って遣ったのです」と飽くまで抉《えぐ》る様に聞くから余は見兼ねて「浦原浦子にです」と代言した。
 何しろ余り無惨な有様に、叔父は勿論余さえも此の上見て居る勇気はない、水の中で恨みを呑んで沈んで居たお浦の顔を見るのが如何にも辛い次第だから、俯向《うつむ》いて暫く目を閉じて居たが、
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