、勿論余は異存など云う可きでなく、最しや腹の中でも無益だろうと思っても念の為探る方が当然には違いないから、唯「アア爾ですか」とのみ答えたが、探って愈々何の様な結果になるだろうとは、神の様な炯眼の読者でも知る事は出来まい、今思うと実に此の様に意外に、恐ろしい結果は又と有るまい、本統に身の毛が逆立つよ。

第三十六回 大変な事を発明

 堀の底から何が出るか、既に捜索に着手して居ると云うから、余は行って見たく思うけれど、猶だ医者から外出の許しを得て居ぬゆえ、塔の上から見るとしよう、ナニ堀端まで行った位で余の身体が悪く成る気遣いはないけれど、今は充分に此の身を自重せねば成らぬ時際《とき》だ、是から何の様な闘いに臨まねば成らぬかも知れぬ、毒蜘蛛の巣窟と云う蜘蛛屋へも行かねば成らぬかも知れぬ、秀子の為に骨身を砕かねば成らぬかも知れぬ、何でも大事に大事を取って、一日も早く此の身を鉄の様に丈夫な日頃に癒して了わねばならぬ。
 塔の四階に在る自分の室へ登ったけれど、少しの事で充分には見えぬ、もう一階上へ行けばと日頃メッタに昇った事のない時計室へ上って見たが茲ならば先ず我慢が出来る。堀から堤《どて》の九
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