に叔父に問うた「何の為に堀の底と云う見当を附けたのです」と、叔父は少し当惑の体で「イヤ見当を附けたのではない、何の手掛りもなくて探偵も高輪田氏も甚く心配して居て、此の方は其の心配を坐視するに忍びぬから、高輪田に向い「最早尋ねる所がないから念の為堀の底でも探って見ますか」と云うた、すると高輪田氏は飛び附く様に「私も実は堀の底を探り度いと思って居ましたが御主人が其の御了見なら早速探らせて頂き度い」とて先に立って探偵に説き付けた、探偵は躊躇の気味で「何の手掛りも得ずに、唯深い堀が有るからと云って堀を探るは職業上の恥辱だ」と答えたけれど何しろ千円の懸賞をまで出した人の言葉を無下に聞き流す事も出来なんだか夫に又高輪田氏が「ナニ手掛りのないのに困じて堀を探るのではなく、既に土堤の芝草を踏みにじった所が有ったではないか、是だけの形跡が有れば、兎にも角にも探らずには置かれまい」と云い此の方も自分の口から言い出した事だから傍から賛成の意を表した、夫で探偵も遂に同意し、既に先刻から其の用意を始め、舟も艇庫《ていこ》から出し、此の土地の巡査なども監督の為に出張して居る、最う大方着手する所だろう」と斯う答えた
前へ
次へ
全534ページ中166ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング