の英国に、何で秀子の云う様な毒蜘蛛が居る者かと、少しの間に思い直しは直したけれど、余は何うも其の養蟲園へ行って見たい、秀子の手帳を取返し得るや否やは扨置いて、毒蜘蛛の糸に巻かれ身動きも出来ないで喰い殺されると秀子の形容する其の実際の有様を見究め度い、併し今の此の身体では仕方がない、是ならば大丈夫と医師から許しを得る様になれば余は必ず行って見よう。
併し之よりも差し当り余が不審に思うのは虎井夫人と秀子との間柄だ、問うは今だと思い「ですが秀子さん、虎井夫人は貴女の附添人であるのに貴女の手帳を盗むとは余り甚いでは有りませんか」秀子「ハイ私の附添人ですけれど少しも気の許されぬ人ですよ、身体の健康な時には色々の事を目論見《もくろみ》まして、幾度私と喧嘩するかも知れません」勿論余は秀子と虎井夫人と意見の衝突する場合の有るのを知って居る、初めて此の土地の宿屋に泊った夜なども、既に記した通り夫人と秀子とが甚く争って居るのを聞いた、だから秀子の此の言葉は少しも偽りのない所であろう、けれど夫ならば何故に暇を遣らぬのであろう、余「其れほど気の許されぬ方なら何故雇うてお置き成さる」秀子「私が雇うて置くという
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