は怪しむに足らん、お浦の性質として人と約束したり約束を破ったりするのを何とも思わぬ、成るほど余にも高輪田に縁談を言い込まれた事を話した、シテ見ると余と高輪田とへ両天秤を掛けて運動して居たと見える、酷い女だ。
根西夫人も少し驚いた様子で「オヤ高輪田さん貴方はあの朝、又も浦子さんに縁談を申し込んだのですか、私が尚早いから気永く成さいとアレほど貴方に忠告して置きましたのに」高輪田「でも尚早くは有りませなんだ、嬢の承諾して呉れたのが何よりも証拠です」根西夫人「承諾しても失踪したのが尚早かった証拠でしょう、承諾したのを後悔して夫で姿を隠したでは有りますまいか」此の言葉で見ると此の夫人も余ほど高輪田を憎んで居ると見える、高輪田は顔を赤らめたが其のまま叔父に向って言葉を継ぎ「此の様な訳ですから私は何うしても浦子嬢を探し出さねば成りません、夫に就いては今度の森探偵へ千円の懸賞を附したいと思いますが、何うか貴方の御承諾を」叔父「其の様な事なら私から、願いこそすれ故障などは有りません」高輪田「そうして此の探偵が終る迄は私は此の土地に留まります」根西夫人は又聞き咎め「此の土地に留まるとて私共は近々鳥巣庵を
前へ
次へ
全534ページ中157ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング