恐れを催した様子で「戸を開けて下さい、私を出して下さい」秀子「出して上げるのは誓いを立てた上ですよ、誓いますか誓いませぬか、今誓わねば、未来永久幾等貴女が後悔しても到底帰らぬ目に遭わせますよ」
 未来永久、悔んでも帰らぬ目とは何の様な目に遭わせる積りだろう、茲で殺すぞと云う様な意味にも聞こえる、孰れにしても余の身体が自由でさえあればと、余は心の中で地団駄踏むほどに悶くけれど仕方がない、只紙一重を隔てられて何うしても其の紙を破る事の出来ぬ様な気がする、実に情けない、お浦は一声「其の鍵をお渡し成さい」と叫んだが直ちに秀子に飛び附いた様子だ、再び組み打ちの音が聞こえる、何方が勝つかは分らぬが双方とも必死と見える、頓て一方は、足を踏み辷らせた様子で「アッ」と云って床の上に倒れた、其の声は確かにお浦の方であった。
 余は此のとき、悶きに悶いて、辛《や》っと半分起き上って、前へ踏み出そうとしたが足に少しも力が無く、直ちにドシンと倒れて了った、倒れる拍子に、初めて「ウーン」と云う呻きの声が口から洩れたが、其のまま気が遠くなって了った。
 極めて少しの間ではあるが、自分と世間とが遠く遠く離れるかと思っ
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