堪えません」秀子は極めて低い声で「イイエ、私は貴女の御笑談《ごじょうだん》としか思っては居ませんのです、気にも留めねば最う忘れて居りました」此方も仲々鷹揚な言い振りだが、真逆忘れるほど気に留めぬ訳でも有るまい、併し是は斯る場合の紋切形の口上だ、お浦「其の代り今日はお詫びの記しに貴女の昔友達を誘うて参りました、是は貴女からお礼を云うて戴かねば成りません、オホホホ」と追従か世辞の様に笑うけれど、実は全く勝誇った笑いなのだ、愈々化けの皮を引剥《ひんむ》いて恨みを晴らす時が来たと、嬉しさに腹の中から込み上げる笑いを世辞に紛らせて了うのだ、此の様な事は総て女の長所だが取り分けてお浦の長所だ、余は此の笑い声を聞いてゾッとした、最う万事休すだと絶望した、併し秀子は気も附かぬ様子で「エ、私の昔友達とは」と怪しんで問い返した、声に応じて高輪田は進んで出た、お浦は軽く引き合わせた「ハイ貴女が昔御存じの高輪田さんです、高輪田さん、此の令嬢は今は当家の養女です」声と同時に秀子と高輪田とは顔が合った、余は動悸の音が自分の耳へ聞こえる程だ、本統に必死の場合とは茲のことだ、余は全く自分の事の様に思い、眸を凝らして秀
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