様な大胆な事は出来ませんサア既に斯《こう》まで手配《てくばり》が附て居れば旦那が外から戸を叩く、ハイ今開ますと返事して手燭を点《つけ》るとか燐寸《まっち》を探すとかに紛らせて男を逃します逃した上で無ければ決して旦那を入れません(荻)夫《それ》は爾《そう》だ、ハテナ外妾《かこいもの》で無し、夫《それ》かと云って羅紗緬《らしゃめん》でも妻でも無いとして見れば君の云う奸夫《まおとこ》では無いじゃ無いか(大)ハイ夫《それ》だから奸夫とは云いません唯だ奸夫の様な種類の遺恨で、即ち殺された奴が自分の悪い事を知り兼々恐れて居《いる》と云うだけしか分らぬと申ました(荻)でも奸夫より外に一寸《ちょっ》と其様な遺恨は有るまい(大)ハイ外には一寸と思い附ません併し六ヶしい犯罪には必ず一のミステリイ(不可思議)と云う者が有ますミステリイは到底罪人を捕えて白状させた上で無ければ何《ど》の様な探偵にも分りません是が分れば探偵では無い神様です、此事件では茲が即ちミステリイです、斯様に奸夫騒ぎで無くては成らぬ道理が分って居ながら其本人に妻が無い是が不思議の不思議たる所です、決して当人の外には此不思議を解く者は有ません
前へ 次へ
全65ページ中51ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング