から其上へヅシンと頭を突く、身体の重サと落て来る勢いでメリ/\と凹込《めりこ》む、上から血眼で降《おり》て来て抱起すまでには幾等《いくら》かの手間が有る其中に血が尽きて、膨上《ふくれあが》るだけの勢が消《きえ》たのです、背中から腰へ掛け紫色に叩かれた痕や擦剥《すりむい》た傷の有るのは梯子段の所為《せい》、頭の凹込は丸い物の仕業、決して殺した支那人が自分の手で斯う無惨な事をしたのでは有《あり》ません、何うです、是でも未だ分りませんか(荻)フム仲々感心だ、当る当らんは扨置いて初心の貴公が斯う詳しく意見を立《たて》るは兎に角感心する、けれど其丸い者と云うのは何だえ(大)色々と考えましたが外の品では有ません童子《こども》の旋《まわ》す独楽《こま》であります、独楽だから鉄の心棒が斜に上へ向《むかっ》て居ました其証拠は錐を叩き込だ様な深い穴が凹込の真中に有ます(荻)併し頭が其心棒の穴から砕《くだけ》る筈だのに(大)イヤ彼《あ》の頭は独楽の為に砕《くだけ》たのでは無く其実、下まで落着かぬ前に梯子の段で砕けたのです独楽は唯アノ凹込を拵えただけの事です(荻)フム成る程|爾《そう》かなア(大)全く爾です既
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