ちょっ》と合点の行きにくい箇条、併しナニ考えれば訳も無い事です、其説明は先ず論理学の帰納法に従って仮定説から先に言《いわ》ねば分らぬ、此闘いは支那人の家の高い二階ですぜ、一方が逃る所を背後《うしろ》から二刀《ふたかたな》三刀追打に浴せ掛たが、静かに坐って居るのと違い何分にも旨《よ》く切れぬ夫《それ》だから背中に縦の傷が幾個《いくつ》も有る一方は逃げ一方は追う内に梯子段の所まで追詰た、斯うなると死物狂い、窮鼠却て猫を食《は》むの譬えで振向いて頭の髪を取《とろ》うとした、所が悲しい事には支那人の頭は前の方を剃《すっ》て居るから旨く届かぬ僅に指先で四五本|握《つかん》だが其中に早や支那人の長い爪で咽笛《のどぶえ》をグッと握まれ且つ眉間を一ツ切砕《きりくだ》かれウンと云って仰向に脊《うしろ》へ倒れる、機《はず》みに四五本の毛は指に掛った儘で抜けスラ/\と尻尾の様な紐が障《さわ》る其|途炭《とたん》入毛だけは根が無いから訳も無く抜けて手に掛る。倒れた下は梯子段ゆえドシン/\と頭から背《せな》から腰の辺《あたり》を強く叩きながら頭が先に成《なっ》て転げ落《おち》る、落た下に丁度丸い物が有《あっ》た
前へ
次へ
全65ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング