相○顔|面長《おもなが》き方《かた》○口細き方眉黒き方目耳尋常左りの頬に黒|痣《あざ》一ツあり頭《かしら》散髪|身長《みのたけ》五尺三寸位中肉○傷所数知れず其内大傷は眉間に一ヶ所背に截割《たちわり》たる如き切傷二ヶ所且肩より腰の辺りへ掛け総体に打のめされし如く膨上《はれあが》れり左の手に三ヶ所、首に一ヶ所頭の真中に大傷其処此処に擦傷《かすりきず》等数多あり、咽《のど》に攫《つか》み潰せし如き傷○衣類大名縞|単物《ひとえもの》、二タ子唐桟《ことうざん》羽織但紐附、紺博多帯、肉シャツ、下帯、白足袋、駒下駄○持物更に無し○心当りの者は申出ず可し
[#ここで字下げ終わり]
[#天から4字下げ]明治二十二年七月六日
[#天から8字下げ]最寄区役所
[#地から2字上げ](右某新聞より転載)
人殺しは折々あれど斯くも無惨な、斯くも不思議な、斯くも手掛《てがゝり》なき人殺しは其類少し去れば其日一日は到る所ろ此人殺しの噂ならぬは無《なか》りしも都会は噂の種の製造所なり翌日は他の事の噂に口を奪われ全く忘れたる如し独り忘れぬは最寄《もより》警察の刑事巡査なり死骸の露見せし朝の猶お暗き頃より心を此事にのみ委
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