附かず、チョン髷でも同じ事、唯だ此癖の附くのは支那人に限ります、支那人の頭は御存《ごぞんじ》でしょう、三ツに分て紐に組ます、解《とい》ても癖直しをせぬ中は此通りの曲《くせ》が有ます根《もと》から梢《すえ》まで規則正しくクネッて居る所を御覧なさい夫に又支那人の外には男で入毛する者は決して有りません支那人は入毛をするのみならず夫《それ》で足《たら》ねば糸を入れます、此入毛と云い此縮れ具合と云い是が支那人で無ければ私しは辞職します、エ支那人と思いませんか」荻沢は一応其道理あるに感じ猶《な》お彼《か》の髪の毛を検めるに如何にも大鞆の云う通りなり「成るほど一理屈あるテ(大)サア一理屈あると仰有る柄《から》は貴方も最《も》う半信半疑と云う所まで漕《こぎ》つけました貴方が半信半疑と来れば此方の者です私しも是だけ発明した時は尚《ま》だ半信半疑で有たのです、所が後から段々と確な証拠が立《たっ》て来るから遂に何《ど》うしても支那人だと思い詰め今では其住居其姓名まで知て居ます、其上殺した原因から其時の様子まで略ぼ分って居ます、夫も宿所の二階から一足も外へ蹈出さずに探り究めたのです(荻)夫では先ず名前から云う
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