しき》に鱗は皆根から梢《すえ》へ向て居るのです、ですから捻《より》を掛たり戻したりする内に鱗と鱗が突張り合てズリ抜《ぬけ》るのです(荻)成る程|爾《そう》かな(大)未だ一ツ其鱗の早く分る事は髪の毛を摘んで、スーッと素扱《すご》いて御覧なさい、根《もと》から梢《すえ》へ扱《こ》く時には鱗の順ですから極《ごく》滑《なめら》かでサラ/\と抜けるけれど梢より根へ扱く時は鱗が逆ですから何と無く指に膺《こた》える様な具合が有て何《ど》うかするとブル/\と輾《きし》る様な音がします(荻)成る程|爾《そう》だ順に扱けば手膺《てごたえ》は少しも無いが逆に扱けば微かに手膺えが有る(大)サア是で追々に分ります私しは此三筋の髪の毛を其通りして幾度も試してみましたが一本は逆毛ですよ、是は最《も》う死骸の握って居る所を其儘取ッて堅く手帳の間へ挿み大事にして帰ッたのだから途中で向《むき》の違う事は有ません此三筋を斯う握って居たのです、其中でヘイ此一本が逆髪《さかげ》です外の二本とは反対に向て居ます(荻)成る程(大)サア何うです大変な証拠でしょう(荻)何故―(大)何故だッて貴方、人間の頭へは決して鱗の逆に向た毛の生《
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