《たがいちがい》に二本の毛を重ね一緒に二本の指で摘《つまん》で、イヤ違ます人差指を下にして其親指を上にして爾う摘むのです、夫で其人差指を前へ突出《つきだし》たり後へ引たり爾々《そう/\》詰《つま》り二本一緒の毛へ捻《より》を掛たり戻したりするのですソレ奇妙でしょう二本の毛が次第/\に右と左へズリ抜るでしょう丁度二|尾《ひき》の鰻を打違《うちちが》えに握った様に一ツは右へ抜け一ツは左りへ抜《ぬけ》て段々とソレ捻れば捻るほど、ネエ、奇妙でしょう(荻)成る程奇妙だチャンと重《か》さねて摘んだのが次第/\に此通り最う両方とも一寸ほどズリ抜《ぬけ》た(大)夫《それ》は皆|根《もと》の方へずり抜るのですよ、根が右に向《むかっ》て居るのは右へ抜け根が左へ向《むい》て居るのは左へ抜けて行くのです(荻)成る程|爾《そう》だ何《ど》う云う訳だろう(大)是が大変な証拠に成るから先ず気永くお聞なさい、斯様にズリ抜ると云う者は詰り髪の毛の持前です、極々《ごく/\》度の強い顕微鏡で見ますと総て毛の類には細かな鱗《うろこ》が有ります、鱗が重なり重なッて髪の外面《うわべ》を包んで居ます丁度筍の皮の様な按排式《あんばい
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