者が有るんです今度は直《すぐ》自分で馳附《かけつけ》ました、馳附て馬道の氷屋を片ッぱしから尋ねました所が居無い又帰って能く聞くと―(荻)爾《そう》長たらしくては困るズッと端折《はしょっ》て/\、全体お紺が居たか居ぬか夫《それ》を先に云わんけりゃ(谷)居ました居ましたけれど昨夜三十四五の男が呼《よび》に来て夫《それ》に連られ直帰るとて出たッ切り今以て帰らず今朝から探して居るけれど行衛も知れぬと申ます、エ怪いじゃ有りませんか的切《てっき》り爾ですぜ三十四五の男と云うのがアノ死骸ですぜ、夫も詳しくは覚えぬと云いますけれど何《どう》だか顔が面長くて別に是と云う癖も無く一寸《ちょっ》と見覚えの出来にくい恰好だッたと申ます、左の頬に黒痣《あざ》はと聞きましたら夫は確かに覚えぬが何でも大名縞の単物《ひとえもの》の上へ羽織を着て居たと云う事です、コレは最《も》う氷屋《こおりや》の主人も雇人も云う事ですから確かです(荻)併し浅草の者が築地まで―(谷)夫も訳が有ますよお紺は氷屋などの渡り者です是までも折々築地に母とかの有る様な話をした事も有り、又店の急《いそが》しい最中に店を空《あけ》た事も有ます相で(荻
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