ほど大鞆に語りし如く傷の様々なる所より博奕場の事を告げ頓《やが》て縮れたる髪筋を出して差当りお紺と云える素性《すじょう》不明の者こそ手掛りなれと説き終りて更に又手帳を出し「斯う見込を附たから打附《ぶっつ》けに先ず築地の吉《きち》の所へ行きました、吉に探らせて見るとお紺は昨年の春あたり築地を越して何所へか行き今でも何うかすると築地へ来ると云う噂サも有るが多分浅草辺だろうとも云い又牛込だとも云うのです実に雲を握《つか》む様な話しさ、でも先《まず》差当《さしあた》り牛込と浅草とを目差して先ず牛込へ行き夫々《それ/″\》探りを入て置て直《すぐ》又《また》車で浅草へ引返しました、何うも汗水垢《あせみずく》に成て働きましたぜ、車代ばかり一円五十銭から使いました夫是《それこれ》の費用がザッと三円サ、でも先《ま》アヤッとの事に浅草で見当が附《つき》ました(警部は腹の中でフム牛込だけはお負《まけ》だナ、手当を余計せしめようと思ッて)実は斯うなんですお紺の年頃から人相を私の覚えて居るだけの事を云て自分でも聞き又|兼《かね》て頼み附《つけ》の者にも捜らせた所、何だか馬道の氷屋に髪の毛の縮れた雇女が居たと云う
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