るまい分らぬならば黙ッて聞く可しだ、私《わし》はアレを此頃流行るアノ太い鉄の頭挿《かんざし》を突込んだ者と鑑定するが何《ど》うだ」大鞆は思わずも笑わんとして辛《やっ》と食留《くいと》め「女がかえ(谷)頭挿《かんざし》だから何《ど》うせ女サ、女が自分で仕なくても曲者が、傍に落て居るとか何うとかする女の頭挿を取て突《つい》たのだ孰《いず》れにしても殺す傍《そば》には女びれが居たは之で分る(大)でも頭挿の脚は二ツだから穴が二ツ開《あ》く筈だろう(谷)馬鹿を言い給え、二寸も突込《つきこも》うと云うには非常の力を入れて握るから二ツの脚が一ツに成《な》るのサ(大)一ツに成《なっ》ても穴は横に扁《ひら》たく開く筈だ、アノ穴は少しも扁たく無い満丸《まんまる》だよシテ見れば頭挿で無い外の者だ」谷間田は又茶かす如く笑いて「爾《そう》気が附くは仲々感心|是《これ》だけは実の所ろ一寸《ちょっ》と君の智恵を試して見たのだ」大鞆は心の底にて「ナニ生意気な、人を試すなどと其手に乗る者か」と嘲り畢《おわ》ッて「夫《そん》なら本統《ほんとう》の所ろアレは何の傷だ(谷)夫は未だ僕にも少し見込が附かぬが先《まあ》静かに聞く
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