探偵物語の処女作
黒岩涙香

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)考《かんがえ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)編年体[#「編年体」は底本では「編作体」]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)頻々《ひん/\》と
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 私は元来自分で読物を書くなどと云う考《かんがえ》は無かった。唯《た》だ私の叔父が裁判官であって、私は子供の時から、色々裁判に関することを見もし、聞きもして、能《よ》く「誤判例」などを読んで、悪人で有った者が死後には善人で有ったり、或は善人だと思って居た者が、大悪人で有ったりする事実を知り、其方《そのほう》に大《おおい》に趣味を懐くことに為《な》りました。左様《そう》いうことを世人の誤ら無いように為るには、実際に必要だと思って居りました。殊《こと》に其頃の新聞に発刊停止が頻々《ひん/\》と下って随分裁判の不公平が有りましたから、其れを一つ当て擦《こす》って、裁判と云うものは社会の重大なるものぞと云うことを知らせてやろうと思いました。それで自分が「絵入自由」に居た頃、筋書を話し
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