握っていた。酋長の嗣子は生れるとすぐに、その時母の乳房にすがっているいっさいの嬰児の主人であるとせられた。
中央アフリカにおいても、大中小の酋長はいずれもみな神権を持っていて、自由に地水風火の原素を使役する。ことに雨を降らすに妙を得ている。
バッテル氏によるに、ルアゴンでは畑に雨の必要があると、酋長に願って空に弓を射て貰う。これは雲にそのつとめを命じさすのである。
そこで人民が酋長に雨乞いを願うと、酋長の方からはその代りに租税を要求するというような争いが起きる。「羊を持って来なければ雨は降らせぬ」などと威張る。また洪水の時などには、麦幾許を納めなければ永劫にあらしがあるなどと嚇《おど》す。
ブーサ族の酋長が、ヨーロッパでは一夫多妻を禁じていると聞いて、「外の人にはそれも善かろうが、しかし酋長には怪しからんことだ」と言ったという。
アシャンチ族の酋長は、いっさいの法律の上に超絶していて、酋長の子はどんな悪事をしても罰せられることがない。そして臣下は酋長のために死ぬことを至上の義務と心得されている。
五
なおこの時代の野蛮人は、一般にごくお粗末な霊魂不滅観を抱いてい
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