た。すなわち人が死んだ後、なお幾許かの間、生きているものと信じていた。死人の影が、地上の生活と同じような生活を、どこかで続けているものと信じていた。
そしてこの天上の生活は、ことに大人物にのみ限られていた。平民や奴隷はこの世限りで死んでしまうのである。そこで大小の酋長が死ぬと、食物だの、武器だの、奴隷だの、女だのと、いろいろなものをその未来の生活に伴って行く。
カライブ族の酋長が死んだ時に、その妻の一人が一緒に葬られた。彼女はこの酋長の子を幾人か生んだというので、ことにこの役目に撰ばれたのである。
かつてハワイで、ハワイナポレオンと称せられた、大虐殺王タメハメハの死んだ時などは、大勢の人間の強制的犠牲を供えたのみならず、なお無数の忠良な臣下が自殺しまたは自ら傷つけて不具になった。そしてその後数年間、国民は毎年その日に糸切歯を抜いて、タメハメハを祭った。
ベナン族の酋長の葬式には、墓の側に徳利形の大きな深い穴を掘って、その口から大勢の奴隷や召使を投《ほ》おり込んで、そこに餓死さしてしまう。
アシャンチの酋長が死ぬと、その親族のものは外に走って出て、手あたり次第に道に会う人々を殺
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