家畜である。そして奴隷はまず、家畜の中の犬を真似た。
カフィール族はその酋長に会うたびに、「私はあなた様の犬でございます」と挨拶をするという。しかし自分の身を犬に較べるこの風習は、ただに言葉の上ばかりでなくその身振りや処作においても、人間としての躰の許せるだけ犬の真似をするということが、ほとんど例外もないほどにいたるところの野蛮人の間に行われている。
まずその一般の方法としては、着物の幾分かを脱いで、地に伏して、そして土挨を被るにある。
アフリカは奴隷制度のもっとも厳格なところであった。したがってこの犬の真似の儀式も、ほとんど極端なまでに行われている。
アルゲン島附近のアザナギス族は、酋長の前に出ると、裸になって、額を地につけて、頭と肩とに砂を被る。イシニー族もやはりまず着物を脱いで、腹這いになって、這いながら口へ砂をつめる。
クラツバートン氏によれば、氏がカトウンガの酋長に謁見した時、二十余名の大官がいずれも腰まで裸になって、腹這いになったまま顔も胸も土まみれになって酋長の傍へ這いずって行って、初めてそこに坐って酋長と言葉を交えることを許されたのを見たという。
ところがこ
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