名の連れと一緒にやって来た。そしてやはりまた同じようなことを勧めた。要するに何でもないことなんだから、名さえ言えば帰されると言うのだ。
 僕はちょっとのすきを窺って、ポケットの中の手帳を司会者の手に握らした。それは一度警官の手に取りあげられたんだが、司会者等のはいって来たどさくさまぎれにまた取り返して置いたのだった。が、また取調べが始まった時、一人の私服がその手帳のないのに気がついた。そして僕を責めた。僕は知らないと頑ばった。すると、もう一人の私服が、それじゃきっとさっきのムッシュ何とか(司会者の名だ)に渡したんだろうから、行って取って来ようと言いだした。
「なあに、もう持っているもんか。誰かほかの人間に渡しちゃったよ。」
 最初の私服がそう言ってあきらめているらしいのに、もう一人の奴は「でも」とか何とか言って出て行った。そしてやがてそれを本当に持って帰って来た。最初の私服は大喜びでそのページをめくり始めた。
 それを一枚一枚よく調べて行けば、どこかに僕の偽名が出て来るのだ。少なくとも、何かの際の覚えにと思って書きつけて置いた、カルト・ディダンティテの中の出たらめ、たとえば僕の両親の名
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