ろと出て行くものすらある。
 時々聴衆の中から、「もういい加減に演説をよしてそとへ出ろ」という叫び声が聞える。会の始まる前に『ル・リベルテエル』や『ラ・ルヴィユ・アナルシスト』(無政府主義評論)なぞを会場で売り歩いていた連中だ。が、それに応ずる声も出ない。そして演壇の上からはしきりにその叫び声を制している。
 僕はコロメルの演説がすんだら、一緒にどこかへ行って、ある打ち合せをする筈だった。が、そんな打ち合せはもうどうでもいいような気になった。そしてこの「外へ出ろ」の叫びを演壇の上から叫びたくなった。
 いよいよコロメルの順番になった。僕はコロメルを呼んで、君の後でちょっと一とこと喋舌りたいんだが、と耳打ちした。コロメルはそれを司会者のたぶん共産党の何とかいう男に通じた。司会者は僕のそばへ来て、何を喋舌りたいのかと聞いた。共産党や無政府党が共同で何かやる時には、いつもその時の標語についてだけ演説する約束のあることは知っていた。で、僕はただ、日本のメーデーについて話したい、と答えた。コロメルは僕を日本のサンジカリストだと紹介しただけなので、司会者は僕の名も何にも知らなかったのだ。
 コロメ
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