ォなのだ。
 僕はその踊り場のすぐそばに下宿していたのだが、どうもパリは危険らしい様子なので、三月のなかばにこのわかれにくいドリイにわかれて、リヨンへ逃げた。そしてすぐドイツ行きの仕度にかかった。
 それにはまず、ドイツ領事のヴィザをもらう前に、警察本部の出国許可証をもらわなければならない。それが、警察へ行くたびに、あしたやる、あさってやる、という調子でごく小きざみに延び延びになって、一カ月あまり過ぎた。むしゃくしゃもする。もうメーデーも近づく。パリもなつかしい。ちょっと行って見ようとなってまた出かけた。
 そしてその翌晩、夕飯を食いがてらオペラの近所へ行って、そこからさらに時間を計ってドリイに会いに行こうと思った。が、そのオペラの近くのグラン・キャフェで、前に一度あそんだことのある、そして二度目の約束の時に何かの都合で会えなかって、それきりになっているある女につかまってしまった。
 その翌日はメーデーだ。今晩こそはドリイと思っていると、その日の午後、こんどはとんでもない警察につかまってしまった。
 秩序紊乱、官吏抗拒、旅券規則違反というような名をつけられて、警察に一晩、警視庁に一晩と
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