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女はみな、あの白い顔にまた綺麗に白粉をぬって、その上にところどころ赤い色をぬって、唇には紅をさし、目のふちは黒く色どっている。そしてその顔をまた、いろんな色の帽子と着物とでかざっている。
その女のうしろ姿がまたいい。すらりとした長いからだの、ことに今は長い着物がはやっているのでなおさらすらりとして見えるのだそうだ、肩や腰をちょこまかとゆすぶりながら、小足で高い靴の踵を鳴らして行く。
僕はそういうのにうっとりとしていると、一人の女にぶつかった。ぶつかったんじゃない。あっちから僕の前にのこのこ出て来たんだ。そして、
「どう、今晩私と一しょにあそばないか。」
と首をかしげて、細いしかしはっきりした可愛い声で言う。
悪い気持じゃない。しかし少々面くらった僕は、あわてて、ちょうどその前を通っていたやはり寄席のようなうちの中へ飛びこんだ。
ドアをあけて、はいるにははいったが、切符を売るようなところがないので、ちょっとまごついていた。すると、ボーイらしい男がやって来て、
「いい席にいたしましょうか。」
と言う。
「ああ、一番いい席にしておくれ。」
僕はどうせ高の知れたものと見く
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