x那人でそんな馬鹿な名をつける奴はないからね。」
この友人は、近く広東へ乗込む孫逸仙一行の先発隊として、あしたの朝上海を出発するのだった。したがって、もしその晩会えなければ、しばらくまた会う機会がないのだった。
「新政府の基礎ができたら、ぜひ広東へ遊びに来たまえ。陳烱明は何にも分らないただの軍人なのだが、社会問題には大ぶ興味を持っているし、僕等も向うへ行けばすぐ、支那や外国の資本家を圧迫する一方法としてだけでも、大いに労働運動を興して見るつもりなんだ。」
今は立派な政治家になっているが、昔は熱心な労働運動者だった彼は、こうしてその新政治の必要の上からの労働運動を主張していたのだった。そして実際また、その頃すでにもう、陳烱明の保護の下に無政府主義者等が盛んに労働組合を起して、広東が支那の労働運動の中心になろうとしていたのだ。その後、香港で起った船員や仲仕の大罷工には、これらの無政府主義者がその背後にいたのだった。
上海で無政府主義者の誰とも会うことのできなかった僕は、広東のそれらの無政府主義者と会いたいと思った。そしてこの支那の新政治家とは、近いうちにまた広東で会う約束をして分れた
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