「たと思った肺が、急にまた悪くなったのだ。医者からは絶対安静を命ぜられた。で、新聞の準備もほとんどみんなに任せきりにしている間に、こんどはチブスという難病に襲われた。
 僕の病気は上海の委員会との連絡をまったく絶たしてしまった。Tからすぐ送って来る筈の金も来なかった。が、近藤憲二が僕の名で本屋から借金して来て、みんな一緒になってよく働いた。そして新聞は、僕が退院後の静養をしてほとんどその仕事に与かっていなかった、六月まで続いた。
 たぶん四月だったろう。僕は再び上海との連絡を謀るためと約束の金を貰うためとに、近藤栄蔵を使いにやった。が、その留守中に、近藤栄蔵や高津正道が堺、山川等と通じて、ひそかに無政府主義者の排斥を謀っているらしいことが、大ぶ感づかれて来た。もしそうなら、僕は上海の方のことはいっさい共産党に譲って、また事実上栄蔵もそういう風にして来るだろうとも思ったが、そして新聞も止して、僕等無政府主義者だけで別にまた仕事を始めようと思った。
 すると、上海からの帰り途で近藤栄蔵が捕まった。新聞はこれを機会にして止した。
 栄蔵は一カ月余り監獄にいて、出て来ると山川とだけに会って、そ
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