もうさっぱりですよ。で、売れないものを置いても仕方がないもんですから……。」
新聞屋の婆さんはどこへ行ってもみな同じようなことを言った。
そして、こうして歩き廻っている間に、これはその他のどこででもそうなのだが、片っぽうの手がないとか義足で跛をひいているとかいう不具者の、五人や六人や、九人や十人には会わないことはない。勿論みな大戦の犠牲なのだ。こういうのを始終目の前に見せつけられながら、今さら戦争でもあるまい、とも思った。
しからば、このルール占領や戦争に反対している共産党やC・G・T・Uの方はどうかというに、要するにただ、新聞や集会でのえらそうな宣言や雄弁だけに過ぎない。時々の示威運動もあるが、一向にふるわない。占領を止めることはもとより、占領軍の横暴を少しでも軽くすることにすら、何の役にも立っていない。
兵隊自身も、一九二一年に二カ年の約束で召集されて、ことしの三月には満期になる筈のが、一カ月二カ月と延びて、さらにいつどこへどう送られるようになるかも知れないのに、これという反対運動一つどこの兵営にも起らない。共産党の『ユマニテ』なぞは、毎日それについて何か書きたてているのだ
前へ
次へ
全159ページ中152ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング