なっているフランスが、その勢いに乗じてどんな無茶をやらんものでもないということは、十分に考えられた。そして僕は、そこから起る結果についての、ある大きな期待をもってフランスにはいった。
 が、フランスは、マルセイユでもリヨンでもパリでも、実に平穏なものだった。今にも戦争が始まりそうだとか、こんどこそはとかいうような気はいは、少なくとも民衆の生活の中にはどこにも見えない。みんな何のこともないように呑気に暮している。
 僕は、大戦争およびその後も引続いて盛んに煽りたてられた狂信的愛国心が、まだ多分に民衆の中に残っていると思った。が、そんな火の気は、王党の機関紙『ラクション・フランセエズ』を先登とする三、四の新聞でぶすぶすとえぶっているくらいのもので、どこにも見えない。
 この『ラクション・フランセエズ』ですら、フランスで一番保守的でそして一番宗教的な大都会のリヨンで、しかも郊外とは言いながら寺院区《カルティエ・デグリズ》とまで言われているある丘の上で、僕は六軒も七軒もの新聞屋を歩き廻ってとうとうその一枚も見出すことができなかった。
「ええ、戦争中にはずいぶん売れたもんですけれどもね。この頃は
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