戒はたしかにない。そして僕はマルセイユのある同志を訪ねて、そっとその相談をした。方法はたしかにある。
これなら、金のつき次第だと思っているところへ、僕がまだ捕まらない前にうちから寄越した手紙が、ある方法で僕の手にはいった。それで見ると、どうしても急に帰らなければならないような、いろんな事情だ。で、仕方がない、おとなしく帰ろう、と残念ながらまたきめ直した。
いよいよ船の出る前々日、次のような借用証一枚に代えて、横浜までの二等切符を一枚、領事から受取った。
[#ここから5字下げ、14字詰め、罫囲み]
借用証
一金五千何法也
右正に借用候也
月 日 大杉 栄
菅領事殿
[#ここで字下げ終わり]
そしてその翌日、うちから、三等の切符代とすれすれぐらいの金が来た。で、それで大急ぎで女房や子供等への土産物を買って、船に乗りこんだ。
いよいよ船に乗りこむ時には、ちょっと警察へ挨拶に行く方がよかろう、という領事の話だったので、まず差支えのない荷物だけを持って夕方警察へ出かけた。船はあしたの朝出るのだから、それまでにあとの荷物は友人に持って来て貰うことにした。そしてとに
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