でもたぶん警戒がうるさかろうと思っていた。そして、そのうるささを多少でも避けるつもりで、ことに選んで一番いいホテルに泊った。
 が、一日い、二日いして、いろいろと注意して見ているのだが、何の警戒もあるらしい様子がない。ホテルででも取扱いに何の変りもない。そとへぶらぶらと出ても、別に誰もつけて来る様子はなく、帰ってもどこへ行って来たとも誰も尋ねない。
 領事がそれとなく警察で聞いて見たのだそうだが、実際停車場へは誰も僕を迎いには出なかったとのことだ。もっとも、ちょうどその汽車の中で大きな泥棒があって、そのために大ぶごたごたしてはいたそうだが、それが僕を迎いに出なかった理由になろうとも思われない。そして、到着早々僕は警察に出頭しなければならない筈なのだそうだが、それもわざわざ領事が行っていろいろと話しして来たのだから、この上出頭するにも及ぶまいという領事の話だった。
 こうなると、僕は裁判所下のグラン・サロンでの、色男等の話を思いださない訳には行かなかった。特別に大ぶ厳重だった僕の追放が、人なみのいい加減なものになったのだ。そう言えば、いつか、ル・リベルテエル社へ来た、ハンガリイの同志など
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